秋の京都は、紅葉の美しさが際立ち、歴史的な寺社や魅力的なカフェ、甘味処が点在する素晴らしい場所です。その中でも、220年以上の歴史を持つ老舗和菓子店「鶴屋吉信」は特に注目されています。この店は「虎屋」「両口屋是清」と並び称される“御三家和菓子”の一つで、全国の百貨店にも出店し、名物の「柚餅」や「京観世」で知られています。
本店は西陣エリアに位置し、季節ごとに変わる工芸菓子で飾られた入り口が特徴です。秋には紅葉、冬にはクリスマスツリーなど、訪れる人々に季節の移ろいを感じさせる工夫がされています。店内に入ると、1階が通常の店舗で、奥には和菓子職人の実演が見られる「菓遊茶屋」があります。この場所では、職人が手がける和菓子の制作過程を間近で見ることができ、特別な体験が提供されます。
2階の「菓遊茶屋」では、和菓子の実演を楽しみながら、出来立ての和菓子を味わうことができます。中庭を眺めながら、四季折々の自然を感じる贅沢な時間が流れます。和菓子職人の水江さんが、手際よく「御園菊」と「綾錦」を作っていく様子は圧巻です。「御園菊」は、白いこしあんを生地で包み、菊の花模様を描くことで、京都御所の高貴な菊を表現しています。一方、「綾錦」は、紅葉をイメージしたきんとんで、季節の移ろいを和菓子で感じられるよう工夫されています。
水江さんは、和菓子作りの伝統技法を大切にしつつ、新しいイベントやアイデアも取り入れています。和菓子は自然の美しさを表現するためのものであり、その技術と素材の調和が重要です。店内では、和菓子の魅力を存分に味わえるだけでなく、スタッフの親しみやすさも魅力の一つです。
和菓子を楽しむ際のマナーについて尋ねると、自由に楽しんでほしいとのこと。ただし、断面を見てほしいという職人の思いもあり、食べやすく切って楽しむのが推奨されています。実演された和菓子は、店頭でも販売されており、長年の伝統と職人の技を間近に感じることができます。秋の京都を訪れた際には、ぜひ「鶴屋吉信」で和菓子の魅力を体験してみてはいかがでしょうか。