フランス菓子は、日本でも親しまれているミルフィーユやエクレアなど、多くの人に愛されるスイーツである。しかし、その背後には深い歴史とともに、まだ知られていない魅力的な菓子も存在する。この連載「パティシエ・シマ 島田徹シェフが教える 松川星さんが学ぶ正しいフランス菓子」では、フランスの有名パティスリーでの経験を持つ島田シェフが、その世界を松川星さんと共に探求している。
連載の第4回目では、パティシエの高度な技術を要する「サントノーレ」が取り上げられた。サントノーレは、パイ生地の周りにカラメルがかかったシュークリームが中央にクリームを飾る、手間暇かけたスイーツである。島田シェフは、まずパイ生地の上にシュー生地をリング状に絞り、焼き上げるところから始まると説明する。生地だけでも二種類が必要で、焼き上がった後はクリームを絞り、カラメルで接着するという工程が続く。サクッとしたパイ生地と、ねっとりとしたクリーム、カリカリのカラメルが織りなす食感のハーモニーは、愛好家を魅了してやまない。
サントノーレの名前の由来には諸説が存在し、パリのサントノーレ通りにあった菓子職人の店が発祥とされている。また、パンの守護聖人であるオノレと関連付けられることも多い。元々は温かいカスタードクリームにイタリアンメレンゲを合わせた「クレーム・シブースト」が使用されていたが、現在はディプロマットクリームが主流となり、見た目の美しさと軽やかな味わいが楽しめる。
松川さんは、サントノーレの見た目と食感のギャップに驚き、カリッとした歯ごたえと甘すぎないクリームの絶妙なバランスを楽しんだという。フランスでは、人気パティシエのセドリック・グロレがサントノーレを再び注目させたこともあり、最近ではアレンジ版も多く登場している。日本ではその人気がまだ浸透していないが、独特の食感と風味で多くのファンに愛され続けている。
次回は、フランス・アルザス地方の伝統的な発酵菓子「クグロフ」をテーマに、その歴史と魅力を探る予定だ。パティシエ・シマの島田シェフが織り成すフランス菓子の世界は、今後も目が離せない。