スイーツや焼き菓子の世界には、意外と知られていない奥深い知識が広がっている。今回は、現役パティシエの大澤智弥氏に、特に重要な「乳脂肪」についてお話を伺った。乳脂肪とは、牛乳に含まれる脂質であり、牛乳を水と脂肪に分けた際の脂肪分を指す。お菓子作りにおいては、生クリームを作る際にこの脂肪分の割合が決まるため、非常に重要な要素となる。
大澤シェフは、脂肪分の多い生クリームは重厚感があり、逆に少ないものは軽やかさを持つと説明する。この脂肪分の比率は、味にも直接影響を与えるため、どのようなお菓子を作るかによって適切な乳脂肪の選択が求められる。一般的には、乳脂肪分が高い牛乳が美味しいとされるが、個々の好みによってその評価は異なる。お菓子作りでも同じで、乳脂肪の高い生クリームが必ずしも美味しいわけではない。
お菓子の種類によって、乳脂肪の使い分けが基本だ。例えば、バスクチーズケーキのようなリッチな焼き菓子には、乳脂肪の高い生クリームが適している。一方、ガトーショコラに添える生クリームは、軽やかでさっぱりとした低脂肪のものが好まれる。最近では、甘さ控えめでさっぱりとした生クリームが求められる傾向にあり、ショートケーキなどでもその影響が見られる。
しかし、多くのパティシエたちは、自分たちの求める味わいにこだわりを持ち、使用する生クリームの割合を工夫している。大澤シェフは、各お菓子に合わせて異なる脂肪配合の生クリームをブレンドしていることを明かす。お菓子作りにおける乳脂肪の選択は、単なる好みだけでなく、技術や創意工夫が詰まった重要な要素であることが理解できる。
大澤智弥氏は、専門学校を卒業後、数々の名店で経験を積み、現在は「こむぎのおいしいおかし」やガレットデロワ専門店「Galet Galet」のシェフとして活躍中。彼の知識と経験から、スイーツ作りの奥深さを感じることができる。お菓子の世界は、見えないところでのこだわりや努力が詰まっているのだ。